赤ちゃんに鉄分は必要?栄養士目線で不足分を補う離乳食の活用方法も解説
鉄分は離乳食のときから摂るべき?何を食べさせれば良いの?そんな悩みをもつ方のために、離乳食と鉄分の関係について以下にまとめてみました。時期別の摂取量やおすすめの食材、簡単レシピなどをチェックして、ぜひ赤ちゃんの食事に取り入れてみてください。
1993年生まれ 東京都在住 1児の母
お茶の水女子大学大学院 食品栄養科学 修士
中級食品表示診断士
著書「小鍋のレシピ 最新版」(辰巳出版)
日経xwoman プロジェクトアンバサダー
赤ちゃんは離乳食の段階から鉄分を摂る必要がある?
赤ちゃんにとって離乳食は、鉄分を摂取する大切な機会になります。赤ちゃんは、鉄分を体内に貯蔵した状態で生まれます。しかし、赤ちゃんの主食である母乳には鉄分が含まれていません。成長とともに体内の鉄分は消費され、生後5ヶ月頃には使い切ってしまいます。
また赤ちゃんの離乳は、生後5~6ヶ月ごろから始めるのが一般的です。母乳を中心に育てられる赤ちゃんは、生後6ヶ月の時点で鉄分欠乏になりやすいといわれています。そのため、離乳食を食べ始める段階から鉄分を補給していく必要があるのです(*1)。
一方赤ちゃんの離乳食は、「初期・中期・後期・完了期」のステージに分かれます。鉄分の摂取量と食べ始められる食材は、ステージごとに決まっているので、それぞれチェックしておくことをおすすめします。
(*1)は、厚生労働省「授乳・離乳の支援ガイド」より参照しました。
離乳食で摂取するべき鉄分量の目安は?
初期
赤ちゃんが母乳から離れる初期の時期は、生後5~6ヶ月ごろが該当します(*2)。鉄分の摂取は、基本的に5ヶ月まではあまり気にしなくても大丈夫です。しかし生後6ヶ月にもなると、鉄分の推定平均必要量は1日あたり3.5mgにアップします。
離乳食初期の鉄分摂取は、6ヶ月からが目安になるので、使用する食品を意識すると良いでしょう。なめらかにすりつぶした状態で食べられるものがおすすめです。
中期
離乳食の中期は、生後7~8ヶ月ごろが該当します(*3)。中期に摂取するべき鉄分量の目安も、1日あたり3.5mgほどになります。
一方赤ちゃんの鉄分摂取の目安には、男女での違いはありません。鉄分が豊富な食品を取り入れながら離乳食を準備しましょう。中期にもなると、口にできる食品のバリエーションも増えるので、いろいろ使っていきましょう。
後期
生後9~11ヶ月ごろになると、離乳食の後期に入ります(*4)。鉄分摂取の目安となる量はやはり1日あたり3.5mgほどですが、赤ちゃんが口にできるようになる食品の種類はさらに多くなります。
離乳食の後期になると、ある程度の固さがあるものも食べられるようになるので、鉄分補給のために工夫してみてください。
完了期
生後12~18ヶ月は、離乳食の完了期になります(*5)。生後12ヶ月ごろになると、鉄分の推定平均必要量はやや下がります。それでも1日あたり3.0mgほどを目安にして摂ってもらう必要があるので、離乳食の工夫は続けていきましょう。
| 年齢等 | 推定平均必要量 |
| 0~5ヶ月 | -- |
| 6~11ヶ月 | 3.5mg |
| 1~2歳 | 3.0mg |
(*2)~(*5)は厚生労働省「授乳・離乳の支援ガイド」より、(*6)は「日本人の食事摂取基準(2020年版)」より参照しました。
鉄分豊富な離乳食におすすめの食品
初期
離乳食の初期におすすめされる鉄分豊富な食品は、卵黄やきな粉、ほうれん草や小松菜などの野菜です。まだまだ食べられるものが限定されているので、使えるものを活用して離乳食を作っていきましょう。なめらかなペースト状に調理して与えるのがポイントです。
| きな粉 | 8.0mg | 小松菜 | 2.8mg |
| 卵黄 | 4.7mg | ほうれん草 | 2.0mg |
中期
離乳食の中期になると、赤身魚やささみといった、鉄分とたんぱく質が豊富な食品も口にできるようになります。また、豆腐や納豆、青のりなどもおすすめです。油での調理は避けて、煮たり蒸したりしながら、舌でつぶせる程度の固さの離乳食に仕上げましょう。
| 焼きのり | 11.4mg | カツオ | 1.9mg |
| 鶏レバー | 9.0mg | ツナ缶(水煮) | 1.0mg |
| 納豆 | 3.3mg | 鶏ささみ | 0.6mg |
| イワシ | 2.1mg | もめん豆腐 | 0.6mg |
以下の記事では、鉄分を効率的に補給する食事の仕方を紹介しています。こちらの記事もぜひチェックしてみてください!
後期
離乳食の後期は、赤身肉や豚や牛のレバーなどの食品が鉄分豊富でおすすめです。また、わかめもOKになります。より歯ごたえのある食品が食べられるようになるので、歯ぐきでつぶせるほどの固さに調理していきましょう。肉は、脂身を取り除いて赤身だけを利用します。
| 豚レバー | 13.0mg | 牛レバー | 4.0mg |
| カットわかめ | 6.1mg | 牛もも肉(赤身) | 2.5mg |
完了期
離乳食の完了期になると、鉄分豊富な食品としてあさりやしじみといった貝類も食べられるようになります。ただし、まるごと与えるにはまだ早いので、最初は細かく刻んで調理するようにしてください。生よりも缶詰の水煮のほうが使いやすいのでおすすめです。
| しじみ(水煮) | 15.0mg | あさり(水煮) | 30.0mg |
(*7)~(*10)は、文部科学省「食品成分データベース」より参照しました。
鉄分が補給できる離乳食の簡単レシピ
初期の簡単レシピ:卵黄&ほうれん草のペースト
離乳食の初期に使える簡単レシピは、卵黄とほうれん草のペーストです。鉄分豊富な野菜の代名詞であるほうれん草と卵黄を組み合わせて、手軽に作れる一品を試しましょう。ほうれん草を小松菜に変えて作るのもOKです。
かつおだしは、冷凍保存できるのでまとめて作り置きするのもおすすめです。かつおぶし5gに対して200mlのお湯で作っただし汁を、製氷皿で固めておきましょう。
- 卵 1個
- ほうれん草 15g
- かつおぶし・お湯 適量
材料(1食分)
- 卵は固ゆでにして殻をむき、卵黄だけを取り出します。
- ほうれん草はゆでてアク抜きし、細かく刻みます。
- かつおぶしにお湯を加えて、かつおだしを作ります。
- ミキサーにほうれん草と、かつおだしの汁のみを入れます。
- よく撹拌してペースト状にし、ほぐした卵黄を混ぜれば完成です。
作り方
中期の簡単レシピ:納豆&ツナがゆ
離乳食の中期は、納豆&ツナを使ったおかゆがおすすめです。納豆やツナも鉄分豊富でやわらかい食品ですが、離乳食にするときは細かく刻むようにしましょう。鉄分だけでなく、良質なたんぱく質もたっぷり摂れる簡単レシピで、赤ちゃんの成長をサポートしましょう。
- ごはん 30g
- 水 100ml
- 納豆 小さじ1杯
- ツナ(水煮) 小さじ1杯
- お湯 適量
材料(1食分)
- ごはんと水を小鍋に入れてフタをし、強火で煮ます。
- 煮立ったら弱火にしてフタをずらし、15分ほど煮ます。
- 火を止めたら、フタをして、そのまま10分ほど蒸します。
- ボウルにツナとお湯を入れ塩抜きし、水気を切ります。
- ツナと納豆を細かく刻み、おかゆに混ぜれば完成です。
作り方
以下の記事では、納豆の栄養成分や効果的な食べ方を紹介しています。気になる方はぜひチェックしてみてください!
後期の簡単レシピ:牛肉トマト
離乳食の後期には、牛肉トマトの簡単レシピで、やや歯ごたえのある一品を準備してみましょう。ミートソース風になるので、うどんやパスタなどと組み合わせるのもおすすめです。余ったら、冷凍保存すればOKです。
- 牛(薄切り肉) 1枚
- トマト 1/4個
- ピーマン・タマネギ 各1/6個
- 水 60ml
- 塩 少々
- 水溶きかたくり粉 小さじ2杯
材料(1~2食分)
- 牛肉は脂身を取り除いてゆで、細かく刻みます。
- トマトは湯剥きして種を取り、みじん切りにします。
- ピーマンとタマネギもみじん切りにします。
- 小鍋に水と牛肉・トマト・ピーマン・タマネギを入れます。
- 野菜がやわらかくなったら塩で薄めに味を整えます。
- 水溶きかたくり粉でとろみをつけたら完成です。
作り方
完了期の簡単レシピ:クラムチャウダー
離乳食の完了期には、クラムチャウダーのような本格レシピも活用できます。大人用と合わせて作れるレシピなので、ぜひ家族で楽しむ一品として作ってみてください。離乳食として使うのがメインなので具は細かくすることがポイントです。
- あさり(水煮缶) 1缶
- ニンジン・タマネギ 各1/2個
- じゃがいも 大1個
- ブロッコリー 40g
- バター 適量
- 水 500ml
- 牛乳 200ml
- 小麦粉 大さじ2杯
- コンソメキューブ 1/2個
- 塩・こしょう 適量
材料(大人も含めて3~4食分)
- あさりの身を缶から取り出し、みじん切りにします。
- ニンジン・タマネギ・じゃがいも・ブロッコリーもみじん切りにします。
- 鍋にバターを入れて熱し、みじん切りにした野菜を加えて炒めます。
- 全体を軽く炒めたら、小麦粉を加え粉っぽさがなくなるまで混ぜます。
- 水とコンソメキューブを加えて、野菜がやわらなくなるまで煮ます。
- あさりと牛乳を加えて煮込み、沸騰直前に火を止めます。
- 離乳食用を取り分け、残りの大人用は塩・こしょうで味を整え完成です。
作り方
離乳食で鉄分を摂るときのポイント
ヘム鉄での摂取を意識する
離乳食で鉄分を摂るときは、ヘム鉄での摂取を意識しましょう。ヘム鉄とは、動物性の食品に多い鉄分のことです。離乳食で効率よく鉄分を摂るには、ヘム鉄を利用することが大切だとされています。
ヘム鉄は、レバーや赤身肉、魚などに豊富に含まれていて、体内に吸収されやすいという特徴をもちます。植物性の食品に多い非ヘム鉄の体内への吸収は2~5%なのに対し、ヘム鉄の吸収は10~20%です(*11)。
(*11)は、オーソモレキュラー栄養医学研究所「鉄」より参照しました。
ビタミンCやたんぱく質をあわせて摂る
離乳食では、ビタミンCや動物性たんぱく質と鉄分を一緒で摂るようにしてください。とくに非ヘム鉄が多い食品を摂るときに意識しましょう。
ビタミンCや動物性たんぱく質には、非ヘム鉄の吸収を良くする働きがあります(*12)。離乳食の初期は食べられるものが限られていますが、みかん果汁はOKなので、ビタミンCで非ヘム鉄の吸収をサポートするのに活用してみましょう(*13)。
以下の記事では、ビタミンCが含まれている食べ物を紹介しています。気になる方はぜひチェックしてみてください!
(*12)はオーソモレキュラー栄養医学研究所「鉄」より、(*13)は一般社団法人母子栄養協会「みかんは赤ちゃんにいつからあげていい?離乳食」より参照しました。
いろいろな食品から摂る
離乳食で鉄分を摂るときは、発達の状況に合わせて、いろいろな食品から摂取するよう心がけましょう。
離乳食では、いろいろな食品の味や舌触りを体験しながら、楽しむことが大切だといわれています。鉄分が豊富でも、同じ食品に偏らないように工夫してください。また、いろいろな食品を通して、鉄分以外の栄養もバランスよく摂れるようにしていきましょう。
時期に合った離乳食で鉄分をしっかり摂ろう
離乳食は、赤ちゃんの成長に合わせて食べ始められる食品が決まってきます。そのため、鉄分摂取を意識する場合でも、それぞれの成長の時期に合った食品で離乳食を作ることが大切です。紹介した食品を工夫して、鉄分がしっかり摂れる一品を作りましょう。