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2023.02.15 HEALTH

【栄養士監修】たんぱく質を摂りすぎるとどうなる?過剰摂取のデメリットと体との関係

たんぱく質は体を作るのに欠かすことのできない栄養素です。健康や美容のために、積極的にたんぱく質を摂ることが良いとされていますが、たんぱく質を摂りすぎるとどうなるのでしょうか? そこで今回は、たんぱく質の摂りすぎによる体への影響について詳しく解説します。

たんぱく質は摂りすぎると危険?

たんぱく質は、人の生命を維持するために欠かすことのできない栄養素です。体の形成からコンディション維持に至るまで、人の体はたんぱく質を必要としています。そのため、たんぱく質が不足すると不調を引き起こす原因となります。

 しかし、必要以上にたんぱく質を摂りすぎると、むしろ体にとって悪影響を及ぼす場合もあります。今回、たんぱく質を摂りすぎることによってどのようなデメリットがあるのかを知り、たんぱく質と上手く付き合っていきましょう。  

たんぱく質と体の関係は?

たんぱく質は体のもととなる栄養素

人の体の約20%はたんぱく質でできています。筋肉や臓器などの成分はたんぱく質で、体を構成する重要な栄養素です。また、体の調整機能に関わる酵素やホルモン、神経伝達物質、免疫物質もたんぱく質からできていて、生命の維持に必要な多くの働きを担っています。

 さらに、糖質や脂質が不足すると、たんぱく質を分解してエネルギー源として使われます。たんぱく質の分解を防ぐためにはエネルギー源として十分な糖質の摂取も必要です。

このように、たんぱく質は私たちの体においていくつもの働きを持ち、欠かせない栄養素です。    

たんぱく質はアミノ酸から作られる

たんぱく質は20種類のアミノ酸から構成されています。20種類のうち、9種類は必須アミノ酸と呼ばれ、体内で合成できないため、食事から摂る必要があります。  

「良質なたんぱく質を摂りましょう」という言葉をよく聞きますが、良質なたんぱく質とは、食品中に含まれる必須アミノ酸のバランスで決まります。このバランスのことを「アミノ酸スコア」と言い、アミノ酸スコアが100に近いほど良質なたんぱく質であると言えます。

肉、魚、卵、牛乳はアミノ酸スコアは100と高い食品です。そのため良質なたんぱく質といえます。(*1)

たんぱく質は、100個以上のアミノ酸が結合したものです。食事から摂取されたたんぱく質は、胃や腸などの消化器官で消化酵素の働きによって分解され、栄養素として吸収されていきます。  

(*1)の情報は、メディックメディア出版「栄養士・管理栄養士のためのなぜ?どうして?基礎栄養学」を参照しました。

食事から摂取したたんぱく質はアミノ酸プールに蓄えられる

摂取したたんぱく質は、小腸でアミノ酸に分解されます。次に、肝臓に運ばれ、必要なたんぱく質に再合成されます。分解されたアミノ酸の一部は、すでに体内にあるアミノ酸とともに「アミノ酸プール」に蓄えられます。  

アミノ酸プールに蓄えられたアミノ酸は、食事由来のもの以外に体を構成するたんぱく質を分解して作られたものもあり、一定量が保たれています。

そのため、食事から摂取したたんぱく質が不足した場合には、体を構成するたんぱく質が分解されるため、体に不調を引き起こす原因となることがあります。    

一方で、たんぱく質を摂りすぎた場合、アミノ酸プールの許容量を超えてしまうため、過剰なアミノ酸は代謝されます。たんぱく質を摂りすぎたことで代謝されるアミノ酸が多くなると、体にとって悪影響を及ぼすことになるのです。(*2)  

  (*2)の情報は、メディックメディア出版「栄養士・管理栄養士のためのなぜ?どうして?基礎栄養学」を参照しました。

たんぱく質の摂りすぎによる体への影響

摂りすぎによるデメリット1:内臓への負担

たんぱく質の摂りすぎによるデメリットとしてまずあげられるのが、内臓への負担です。  

過剰に摂りすぎたたんぱく質は、体内に蓄えておくことができないため、代謝されて処理されます。この代謝の過程で、アンモニアが発生します。アンモニアは毒性のある物質なので、肝臓の働きで無毒化され、尿素に代謝されます。  

続いて、尿素は腎臓の働きによってろ過されて、尿中に溶け込み、排出されます。この時、必要以上にたんぱく質を摂りすぎると腎臓に大きな負担がかかり、体に悪影響となるのです。

摂りすぎによるデメリット2:カロリーの摂りすぎによる肥満

たんぱく質の摂りすぎは、カロリーの摂りすぎによる肥満につながる事もあります。たんぱく質を多く含む食品の中には、脂質も多く含み、高カロリーの食品も多いです。そのため、たんぱく質の摂りすぎだけでなく脂質の摂りすぎ、カロリーの摂りすぎとなってしまいます。

また、調理方法にも注意が必要で、揚げ物などで油を多く使うと必要以上に脂質を摂りすぎてしまいます。  

たんぱく質を摂ることを意識してたくさん食べることが、結果的にカロリーの過剰摂取となり、肥満を招くことになかねません。たんぱく質を摂る際には、「摂りすぎ」に注意し、食材の選択や調理方法にも気を配りましょう。  

摂りすぎによるデメリット3:腸内環境の乱れ

腸内には、善玉菌、悪玉菌、日和見菌の3種類の菌が存在します。通常は日和見菌が一番多く、次に善玉菌、一番少ないのが悪玉菌という割合でバランスを保っています。  

しかし、たんぱく質を摂りすぎると、体の細胞から吸収されなかったたんぱく質はそのまま腸へ届き、悪玉菌のエサになってしまいます。すると、悪玉菌が増えて腸内環境が悪化し、便秘や下痢の原因になったり、肌荒れやアレルギーを引き起こす事もあります。(*3)

過剰なたんぱく質摂取が腸内環境を乱すというデメリットがあることを覚えておきましょう。  

(*3)は、厚生労働省 e-ヘルスネット「腸内細菌と健康」を参照しています。

たんぱく質の推奨摂取量は?

1日に必要なたんぱく質推奨量

日本人の食事摂取基準(2020年版)によると、1日に必要なたんぱく質の推奨量は、18~64歳の男性は65g/日、65歳以上の男性は60g/日、18歳以上の女性は50g/日となっています。(*4)

推奨量とは「この程度の量を摂取することが体にとって良いですよ」とされる量のことです。これ以上に摂取したからといって「摂りすぎである」というわけではありませんが、過度の摂りすぎは体に悪影響を及ぼすこともあります。    

これは一般的な人における推奨量で、定期的に運動を行う習慣のある人や日々トレーニングを行うアスリートにおいてはさらに多くのたんぱく質を必要とします。

(*4)は、「日本人の食事摂取基準(2020年版)」を参照しています。

1日に必要なたんぱく質の計算方法

1日に必要なたんぱく質量は、個人によって異なります。そこで、個人にあったたんぱく質の必要量を体重を用いて計算し、求めることができます。(*5)

1日に必要なたんぱく質量(g)

1日に必要なたんぱく質量(g)=体重(㎏)×約1(g)

体重1㎏あたりのたんぱく質必要量(g)
活動の種類 たんぱく質量(g)
活発に活動しない人 0.8
スポーツ愛好者(週4~5回、30分程度の運動) 0.8~1.1
筋力トレーニング
(維持期)
1.2~1.4
筋力トレーニング
(増強期)
1.6~1.7
持久性トレーニング 1.2~1.4
レジスタントトレーニング 1.2~1.7
レジスタントトレーニングを始めて間もない時期 1.5~1.7
状態維持のためのレジスタントトレーニング 1.0~1.2
断続的な高強度トレーニング 1.4~1.7
ウェイトコントロール期間 1.4~1.8

(*5)は、アスレシピ「1日に必要なタンパク質量」を参照しています。

摂りすぎを防ぐたんぱく質の上手な摂り方

高たんぱく・低カロリーでカロリーの摂りすぎを防ぐ

たんぱく質を摂取する際には、カロリーの摂りすぎを防ぐため、高たんぱく・低カロリーの食事がおすすめです。  

高たんぱく・低カロリーの食事においておすすめの食材を下にまとめました。これらの食材は、たんぱく質を多く含む一方で脂質の量は多くありません。そのため、脂質の摂りすぎを防ぎ、過剰なカロリー摂取を控えることができます。

上手く活用することで、良質なたんぱく質を摂取しながら、カロリーを摂りすぎない食事を心がけましょう。  

    おすすめの食材
  • 肉類:鶏むね肉、鶏ささみ、牛豚赤身、ヒレ肉、もも肉
  • 魚介類:マグロ赤身、アジ、イワシ、タラ、サケ、イカ、タコ、エビ
  • 卵:卵白(卵黄は脂質が多い)
  • 大豆製品:納豆、豆腐、高野豆腐
  • 乳製品:低脂肪乳、ヨーグルト、カッテージチーズ、モッツァレラチーズ

たんぱく質の多い食品

たんぱく質の多く含まれる食品である鶏むね肉は、重量約250gで約60gのたんぱく質を摂取できます。鶏むね肉1枚が約250gなので、鶏むね肉を1枚食べれば成人男性1日に推奨されるたんぱく質を摂取できるということです。  

つまり、たんぱく質摂取を意識して鶏むね肉ばかり食べていると、すぐに摂りすぎてしまうのです。一つの食材ばかりを摂りすぎるのではなく、色々な食品を組み合わせてたんぱく質を摂ることで、摂りすぎを防ぐと同時に栄養バランスを整えるうえでも大切です。

たんぱく質の多い食品と含まれるたんぱく質量(可食部100gあたり)(*6)
食品名 たんぱく質量(g)
若鶏 むね肉 23.3g
若鶏 ささみ 23.9g
ひきわり納豆 16.6g
鶏卵 全卵 生 12.2g
木綿豆腐 7.0g
ヨーグルト 全脂無糖 3.6g
普通牛乳 3.3g

(*6)は、「食品成分データベース」を参照しています。

プロテインを利用する際の注意点

最近は、スポーツをする方やダイエット、健康維持のために、プロテインを利用されている方も多いと思います。  

プロテインは、たんぱく質を手軽に補給できますが、摂りすぎには注意が必要です。使い方を間違えると、たんぱく質やエネルギーの摂りすぎになり、体に悪影響を及ぼすことがあります。  

健康維持のためにと思って取り入れたはずが、たんぱく質の摂りすぎによって健康維持の弊害になる可能性があることも知っておきましょう。

たんぱく質は摂りすぎないよう適正量を摂取しましょう!

体にとって欠かすことのできない栄養素であるたんぱく質ですが、摂りすぎるとかえって悪影響を及ぼすことがあることをお分かりいただけたでしょうか。  

自分にとって必要なたんぱく質の量を知り、摂りすぎないよう注意することが大切です。また、たくさん摂ろうとするだけでなく、たんぱく質の質を考えた摂り方がとても重要ですね。

たんぱく質の働きを理解し、摂りすぎを防いで食事に上手く摂り入れることで健康な体を維持できるようたんぱく質と上手く付き合っていきましょう。